Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

高値更新を続ける東証株価

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年9月7日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日本の株価は8月下旬から再び上昇し、東証株価指数(TOPIX)が1990年以来の高値更新を継続(図表1)。

 注目されやすい日経225は個別大型株の影響を受け7月初に記録した高値(33,753円)に至っていないが、TOPIXは旧東証一部全体の時価総額であるため、その高値更新は株価の傾向をより正確に表している(図表2)。

 バブル期以来の高値を更新した5月には点描(5月22日付)で、日本株の強さは史上最高益の企業決算や脱デフレ期待など好材料が複合的に作用したもので、持続しそうとの見解を示したが、今のところその線に沿った動きのようだ。

 最近の気になる主な点は、7月末の日銀の金融政策修正(長期金利操作の上限引上げ)と中国経済の鈍化の影響だろう。ただ現時点では、双方とも株価には明確なマイナス要因とはなっていないようだ。

 日銀の政策修正については、直後には株価下落がみられた。しかし、①「粘り強く緩和を続けていく」との情報発信で日米金利差の大きさが改めて注目され、為替相場は円安気味に推移(図表3)、輸出関連株を押し上げていると同時に、②長期金利の小幅上昇が、収益改善期待を通じて金融株を上昇させている。株価への影響という点からは、日銀は上手くやっているようにみえる。

 中国経済の鈍化については、関連する企業の株価にはマイナスに作用している面もあるが、外人投資家による中国株から日本株へのシフトに繋がっているようだ。

 いずれも株式市場が「いいとこ取り」をしている感は否めないが、根底には日本経済の良好なファンダメンタルズが株価上昇を支えていることがあるのだろう。今後も、海外経済や日銀の政策修正に注意が必要ではあるが、当面は、振れを伴いつつも、基本的には株価の堅調な動きが維持されるとみておいてよいだろう。

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