Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

成田空港:入国は19年並みに回復、出国は半分以下

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年9月22日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週公表された8月の出入国管理統計をみると、外国人入国者数は、年間ピークを記録した19年と比較して、全国で94%、成田空港では97%まで回復し、羽田空港は118%と大きく超過(表1)。

 全国ベースで国別に上位5か国をみると、①韓国が引き続き1位となった、②中国・台湾を除く3か国が19年の水準を明確に上回った、③その中国も日本向け団体旅行解禁などにより2位まで回復した、などが特徴(表2)。

 中国については、1位であった19年に比べると半分程度にとどまるが、3か月前の5月時点では2割程度だったので、急速な回復。今後の回復ペースに関しては、原発処理水放出の影響が懸念材料だが、まずは9月末からの国慶節連休の動向が注目される。

 一方の日本人出国者数も回復しているが、19年と比べると羽田空港では84%と比較的順調だが、全国は57%、成田空港は48%と半分以下にとどまる。出国者数の回復が鈍い基本的な背景は、為替円安や海外物価高による海外旅行の割高感、日本人のコロナ感染に対する慎重さなどと考えられ、暫く続く可能性がある。

 出入国両面における成田と羽田の伸びの差は、都心からの利便性の違いなどを背景としたシフトという長年の傾向に、コロナ禍からの回復局面における復便ペースの違いなどが加わったためで、当面は持続しそうだ。

 ただ長い目でみれば、羽田の拡張には限界があり、成田はそれを補いつつ、①アジア各国への乗り継ぎ地、②アジアを中心としたLCC拠点、③航空貨物拠点といった独自の機能を発揮しながら、発展を続けていくことが十分に期待できる。第3滑走路の新設など28年度を目途とした機能強化はそのためである。その効果がフルに発揮されるよう、成田空港と外環道を最短で結ぶ北千葉道路の早期全面開通についても引き続き強く期待したい。

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