Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

輸入コストは再び上昇へ

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年9月13日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日8月分が公表された日本銀行の企業物価指数(企業間で取引されるモノの価格)の動向をみると(図1)、21年以降上昇していた輸入物価指数は22年秋ごろをピークに反落しているが、21年に比べると高水準を維持。そうした中で国内企業物価指数は、輸入コスト増が多少遅れる形で次第に転嫁され、高めの水準で横ばいとなっている。

 総研が実施した最近の企業のコスト増に関するアンケートでは、8月7日付けの点描で示したように、企業の関心は仕入価格から人件費にシフトしつつある。しかし、これには人手不足が深刻化していることに加え、輸入コストがやや落ち着きを取り戻してきたことも影響しているとみられる。このため、先行き輸入物価が再び上昇に転じれば、それが直接・間接に企業経営にとって再び重要な影響を及ぼしていくと考えられる。

 この点、輸入コストに先行する国際商品市況の動向をみると(図2)、ドル建て価格は22年半ばごろをピークに反落していたが、このところ多少反発している。中国経済の鈍さなどを反映して軟調に推移している品目もあるが、全体としては原油を中心に底入れの感がある。さらに、円建て価格については、最近の円安進行もあって明確な上昇に転じ、22年のピークも更新している。

 こうしたことを踏まえると、品目による違いがあるほか、ガソリン等に対する政府の補助金がある程度和らげるとは思われるが、輸入コスト全体としては先行き再び上昇に転じていくとみておいた方がよいだろう。

 企業経営にとっては厄介な悩みが一つ増えるが、経済活動が回復し値上げに対する需要家の抵抗力も以前よりは薄らいでいることから、これまでの不十分な部分も含め適正な価格転嫁に努めていくことが大事だ。その影響を含め、日本全体として物価上昇のトレンドは暫く続くとみておいた方がよさそうだ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。