Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

景気回復が続き人手不足が強まる──日銀9月短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年10月3日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は昨日(10/2日)、9月短観結果を公表。

 業況判断(表1)をみると、全規模・全産業では+10と2期連続の改善。消費税率引上げ前の19年6月調査と同じで良好な水準。

 業種別には、非製造業が経済活動正常化を反映して引き続き改善、製造業は海外経済鈍化の影響を受けつつもごく緩やかに改善。非製造業では、宿泊・飲食サービスや小売、不動産の改善が牽引。製造業は、供給制約緩和や円安の影響から主力の自動車が改善したことが目立つが、円安の恩恵を受けやすい大企業が改善した一方、コスト高の影響が大きい中小企業は横ばいにとどまった。

 事業計画は、引き続き前向きの企業行動を示すもの。全規模・全産業ベースでみると(表2)、売上・収益は23年度も堅調な計画。経常利益は小幅減の見通しだが水準は高く、6月対比で上振れていることもあり懸念の必要はない。

 ソフトウエア・研究開発を含む23年度の設備投資計画は、3年連続かつ大幅な増加。中小企業を含めソフトウエアがとくに高い伸びで、DX投資に積極的であることが分かる。

 この間、中小企業中心に人手不足感がジワジワ強まっている(表3)。とくに中小企業の非製造業の雇用判断DIは-44と、19年9月調査と並んで過去最大の不足超を記録し、先行きも-50とさらに不足超が拡大する見通し。ソフトウエア投資の大幅増は、人手不足への対応が意識されている面が強いと考えられる。

 調査結果は、景気が内需主導で回復する中、企業が人手不足などを意識して対応を進めつつあることを示すもの。企業経営にとっては、海外経済鈍化の一方、人手不足の深刻化、円安によるコストの再上昇、金利のある世界への復帰など懸念材料は少なくないが、景気の回復自体は続くとみられるだけに、課題対応を意識しながら前向きの企業行動が拡がることを期待したい。

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