Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─回復ペースは遅い

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年10月16日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。主な副題は“Global recovery remains slow”(世界経済の回復ペースは依然遅い)。

 世界経済の成長見通しをみると(表1)、22年の+3.5%から23年+3.0%、24年+2.9%と緩やかに減速するとの見通し。7月見通し対比では23年不変、24年-0.1%の下振れと、全体では大きな変化はない。

 地域別には、先進国では米国を上方修正する一方、ユーロ圏を下方修正。新興国については、インフレが落ち着き始めたラ米が上振れの一方、不動産不況が悪化する中国が下振れ。IMFは地域によるバラツキが拡大していると指摘。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、22年+8.7%のあと、23年+6.9%、24年+5.8%とスローダウンするが、7月対比では23年+0.1%、24年+0.6%の上振れ。世界的なインフレの鎮静化には時間がかかるとの見方。

 以上を要約すると、IMFは、世界経済の軟着陸をメインシナリオとしつつも、なかなか強まらない回復力や地域によるバラツキ、インフレの高止まりなどに懸念を示しているということだ。この点に関連して、地政学リスク的緊張の高まりが、世界の分断や商品市況の高騰に繋がりかねないと指摘する。最近のイスラエル情勢についても注意が必要だ。

 日本との関連では、基本的には、世界経済はパッとしないが失速することもなく概ね中立であり、日本経済は、個人消費や設備投資などの内需が牽引する形で、緩やかな回復傾向を続けるとみてよい。

 ただ、世界経済についてgood newsはあまりなく、bad newsがジワジワ増えている。下振れリスクが顕在化すれば日本経済にも少なからぬ負の影響を及ぼしうるだけに、下振れリスクに対する感度は少し高めておきたい。

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