Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

人手不足対策─千葉県企業の取組み

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年11月28日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 10月末公表の「千葉県企業経営動向調査」(ひまわりベンチャー育成基金)をみると(図表1)、雇用の過不足について「不足」と答えた企業が「過剰」と答えた企業を大きく上回るなど、千葉県でも人手不足が顕著となっている。

 特に非製造業では不足超が5割を超え、「深刻な不足」、「かなり不足」という厳しい不足に直面している企業は合わせて2割以上。業種別には、建設・運輸の不足超が7割強、うち厳しい不足が5割近くとなるなど、24年問題の深刻さが窺われる。

 こうした状況に対応するこれまでの企業の取組みをみると(図表2)、「賃上げ」が6割近くとなり、「採用強化(中途・新卒)」も4割を超える。若年層の採用の難しさを反映してか「高齢者の活用」もそれらに続く上位だ。

 一方、「業務削減・アウトソーシング」、「省力化投資」、「業務プロセスの改善」などは2割程度。「柔軟な勤務体系」は1割程度、「リスキリング」は5%程度と僅か。こうした環境変化も意識して労働生産性の向上を目指す抜本的な人手不足対策には至っていない企業が多い模様だ。

 人手不足対応が企業によって様々であるのは当然とは言え、マクロ的に労働人口が減少していく中では、結局のところ生産性向上を実現していくことが最も重要となる。

 これに関連して、人材を最大限に活かす「人的資本経営」の考え方が拡がっており、上場企業は23年3月期決算から人材育成やダイバーシティなどに関する情報開示が求められている。また、人が交わる領域を変革し組織の健全な発展に繋げていくといった意味で、「HX(ヒューマン・トランスフォーメーション)」や「WX(ワークフォース・トランスフォーメーション)」という言葉も使われ始めた。

 先行きの企業経営としては、人材育成等への意識も強めつつ、採用強化と同時に生産性向上への取組みを一層進めていくことが重要となろう。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。