Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業の海外展開─千葉県企業の動向

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年12月5日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨日、ひまわりベンチャー育成基金が「千葉県企業のグローバル化」を公表。TPPなど自由貿易協定が拡がる一方、米中対立やウクライナ戦争など地政学リスクも高まっており、海外展開を巡る環境は複雑化している。そうした問題意識から、千葉県企業の海外展開(拠点設置・輸出)についてアンケート調査も活用しながら纏めたものだ。

 幾つかの特徴がみられる。第1に、千葉県企業の海外拠点設置の意欲は引き続き前向きだ。すでに海外拠点を設けている企業へのアンケートでは(表1)、今後の進出について、「拡大ペースを維持する」と「拡大ペースを上げる」が合わせて73%に及ぶ一方、「撤退・縮小を進める」と「すでに撤退・縮小」は合わせて14%にとどまる。なお、撤退・縮小の国は中国が圧倒的に多く(64%)、サプライチェーン見直しや地政学リスク増大などを意識したものとみられる。

 第2に、海外拠点設置の主たる動機は、コスト削減よりも拡大する海外需要の取り込みを狙ったものだ。動機に関するアンケートをみると(表2)、「海外市場の需要拡大」が57%と圧倒的に多い一方、「コスト削減」は30%と2番目に多いとはいえ前回調査(16年)の43%から大きく減少。賃金上昇や円安などから、拠点先でのコストの優位性は低下しているためだろう。

 第3に、今後の新たな海外展開については、拠点設置よりも輸出取引を検討している先の方が多い。海外展開見通しに関するアンケートでは、「海外拠点設置を検討」が延べ5社・5地域で、前回調査の14社・10地域から減少。一方、「輸出取引の検討」は延べ42社・18地域と多く、前回(45社・15地域)に比べると社数が小幅減少の一方で地域数は拡大。円安進行や相対的なリスクの小ささから、輸出をより選好している姿が窺われる。なお、新たな海外拠点・輸出先の地域については、前回調査ではトップクラスにあった中国が今回はなかったことが特徴の一つ。

 レポートでは、県内企業の先進事例の紹介、それも踏まえた海外拠点設置に関する留意事項(綿密な事前調査、信頼できる現地パートナーの確保など)の指摘もなされている。ご関心のある方は参考にしていただけると幸いである。

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