Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県の多様性条例が成立

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年12月21日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 12月19日、千葉県議会において「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」案が賛成多数で可決され、来年1月1日から施行されることとなった。

 千葉県は全国の都道府県で唯一、男女共同参画に関する条例がない。1999年に国で「男女共同参画社会基本法」が成立したあと、全国の都道府県で関連条例が施行された。千葉県でも2002年に堂本知事のもとで条例成立が目指されたが、廃案になったという歴史がある。

 今回の条例は、男女という区分けだけでなく、年齢、障がい、国籍や性的指向などを含めた様々な違いを尊重することを謳う。理念型の条例で罰則規定は定められておらず、具体的な施策は将来の策定・実施を待つこととなる。

 条例では基本理念として、「人々が様々な違いを尊重しながら、互いに関わり合い、影響を及ぼし合うことが、社会の活力及び創造性の向上に相乗的に効果を発揮する」ことなどを掲げる。そのもとで、県民や事業者の役割として、「個々の立場や特性等に応じて、多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成に寄与するよう努める」ことを求める。

 日本は多様性の尊重において後進国とされる。例えば、世界経済フォーラムが23年に発表した男女間格差を示すジェンダーギャップ指数をみると、日本は146か国中125位にとどまる。

 その日本でも千葉県は意識や取組みが遅れ気味と言えそうだ。企業の女性活躍への取組みを国が一定の基準で評価・認定する「えるぼし」という制度があるが、千葉県のえるぼし認定企業社数は1万社あたり2.2社と全国28位にとどまる。1位は東京都(15.2社)だが、2位は岩手県(5.3社)、3位は山形県(4.5社)と地方であり、必ずしも企業規模や都市・地方の違いによるものではなく、意識の違いが重要な要素のようだ。

 一方、千葉県でも前向きな動きもある。地方議会議員に占める女性割合は20.2%と全国7位(23年4月時点、1位東京都<33.5%>)。男性の育児参加時間は週2時間20分と多くはないが、全国では5位と高め(21年、1位奈良県<2時間35分>)。

 多様性については、様々な違いのある人々で構成されている限りその尊重は不可欠だが、社会や企業のイノベーションや発展にとっても極めて大事だ。イノベーションは多様な知の結合によって生まれるとされるが、そのためには多様な考えを有する人の交わりが重要であり、社会・経済環境が大きく変化するもとではなおさらだろう。同様の点は条例でも指摘されている。

 今回の条例を契機に、千葉県でも多様性の尊重が拡がるとともに、企業でもそれを一層の発展の梃子としていくことを期待したい。

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