Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

来年のビジネス環境はどうなるか

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年12月25日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今年も残り一週間。企業経営を取り巻く環境は、行動制限撤廃といったプラス材料と、コスト高や人手不足、世界経済減速などのマイナス材料が綱引きする1年であった。景気全体ではプラス効果が勝り、企業収益も全体では過去最高を記録したが、値上げや人材確保の成否などによって企業による明暗もはっきりし始めたようだ。

 さて、来年のビジネス環境はどうなるだろうか。マクロ環境のメインシナリオは、世界経済が低めの成長ながら大きな減速を回避する中で、日本および千葉県の経済は緩やかな回復傾向を維持し、デフレからの完全脱却も期待できるというものだ。

 同時に企業が直面する課題も多い年になりそうだ。円安やコスト高は残り、人手不足が厳しさを増すことに加え、国内金利も緩やかに上昇するとみられる。世界情勢の不確実性も高い。1月台湾総統選や11月米国大統領選など政治の主要イベントが控える。日米金融政策の方向性の違い(日利上げ・米利下げ)が、為替を含めた金融市場にどう影響するかにも注意しておきたい。

 来年の日本経済は、①Inbound(インバウンド)、②Inflation(値上げ・賃上げ)、③Interest(金利のある世界)、④Investment(前向きの投資)の4つの“I”がキーワードとなりそうだ。

 ①円安の定着や中国人の訪日再開などから、外国人旅行者数はピークであった2019年(3188万人)を超える可能性。一人当たり消費額が3割程度増加していることも踏まえると、インバウンドが経済を支える力の一つとなりそうだ。

 ②輸入コスト増に伴う物価上昇はピークアウトしそうだが、人手不足に伴い賃上げが進むもとでマイルドインフレが続き、「物価や賃金は上がるもの」との認識が定着するとみられる。

 ③物価上昇が定着すれば日銀は利上げ方向に舵を切り、「金利のある世界」が復活する。企業としては借入金利が多少なりとも上昇することを念頭に置く必要がある。

 ④国内では諸課題に対応しながらコロナ後の成長を実現すべく、DXやGXを含むイノベーションも意識した企業の前向きな投資が拡がることが予想される。

 来年は、景気回復と同時に大きな環境変化も続くだけに、諸課題への対応力がより問われる。千葉県の企業としても、本稿で指摘したマクロ環境も念頭に置いたうえで、様々なリスクに注意を払いつつ、さらなる発展に向けた課題対応力を高めていきたいところだ。

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