Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀:「2%目標実現の確度は少しずつ高まっている」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年1月24日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は1月23日、四半期毎に経済・物価見通しを示す展望レポートを公表、若干修正しつつも、10月から概ね不変(下表)。金融政策については、年初の能登半島地震の発生も踏まえた上で、マイナス金利を含む超低金利や国債買入などによる大規模緩和を維持。

 経済・物価見通しの概要は以下のとおり。

 ①GDP成長率は、23年度に2%近い成長となったあと、24年度以降は1%程度と減速するものの、日本経済の実力である潜在成長率(0%台後半)を上回る成長を続け、経済の体温がジワジワ上昇していく姿を想定。

 ②24年度以降は、コロナ禍からの正常化効果が概ね出尽くすものの、良好な企業収益を反映して設備投資や賃上げが進み、所得増に支えられ個人消費も緩やかに回復する見通し。輸出は当面横ばいながら、IT関連の調整進捗などから次第に増加基調を取り戻すと想定。

 ③消費者物価・前年比は、23年度に2.8%と物価安定目標の2%を上回った後、24年度以降は輸入物価上昇の一服から次第に上昇率を低下させるものの、景気や賃金の改善を反映し25年度も2%に近い上昇率を維持する見通し。

 ④リスクの中心は引き続き海外経済や国際金融市場にあるとの認識。

 以上のように経済・物価見通しおよび金融政策運営とも概ね不変であったが、展望レポートでは物価に関する前向きの表現が増えた印象。例えば、「サービス価格の緩やかな上昇」を明記したほか、物価上昇率が持続的・安定的な2%に向かっていくという見通しについて「不確実性はなお高いものの、実現する確度は引き続き少しずつ高まっている」との表現を加えた。

 今後の金融政策運営については、経済・物価や為替相場などの展開を総合的に見極めていく必要があるが、やはり今春闘で昨年より高めの賃上げが確認されれば、マイナス金利が解除される可能性は高い。時期の特定は難しいが、そう遠くない将来にマイナス金利が解除され、その後ある程度時間をおいて多少の利上げが実現するとみておくのが自然だ。企業経営としては、今年には「金利のある世界」が復活する可能性を念頭に置いておく必要があろう。

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