Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉イノベーションベースの政策提言

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年1月17日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 1年半ほど前に千葉イノベーションベース(CIB)を紹介したが(22年8月30日付点描)、そのCIBが昨年11月に熊谷千葉県知事に政策提言を行った。

 CIBは、千葉県にゆかりのある経営者が発起人となりスタートアップ起業家を支援する取組み(起業家が学びあうコミュニティ)で、21年10月に始動し会員はすでに60社を超える。狙いは一極集中の東京都だけでなく千葉県からも有力な起業家を輩出し、千葉県を活性化すること。

 この政策提言はCIBが活動を開始して初めての試み。CIBが11月に千葉市内で開催したイベント(Innovation conference 2023)で、CIB会長を務めるディマージシェアの大内慎社長が熊谷知事に提言書を手渡した。「『オリンピック理論』を活用した千葉県からのスタートアップ創出に関する政策提言」と題し、起業家支援の充実を求めている。

 提言の骨子は以下のとおり。

 ①起業家に特化したインキュベーション施設の設置

 ②人材育成および相互支援プログラム実施への支援

 ③資金調達のサポート

 ④技術・研究開発の支援

 ⑤大企業との連携強化およびマッチング支援

 ⑥地域課題を解決するソーシャルベンチャー支援

 オリンピック理論とは「選手が高いレベルで競い合うことで、互いのパフォーマンスを向上させる」という考え方。同理論を起業家に応用すべく、CIBの枠を超えて起業家を中心とした千葉県の産官学金のネットワーク強化を求めたものだ。その実現のために、県に対して「千葉県スタートアップ協議会」の設置と、具体的施策を検討するワーキンググループの設置を要請している。

 提言には慎重な検討を要するものもあろうが、千葉にゆかりのある起業家達から政策提言が出てきたことを率直に評価したい。これまでも指摘してきたとおり、①今後人口減少に直面する千葉県では弱点とされてきた新規分野や起業を含む産業活性化が必要、②起業が活発化し成功していくためには地域における関係者の連携が極めて大事、と考えているためだ。千葉県経済同友会もそのことを念頭において、22年12月に「千葉イノベーションスクエア構想」を提案した。

 今回のCIBによる政策提言も一つのきっかけとなり、関係者一丸となって県内の起業家育成に取り組む動きに発展していくことを期待したい。

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