Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─「軟着陸への道」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年2月2日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今週、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。主な副題は“Path to Soft Landing”(軟着陸への道)。予想以上のインフレ鈍化と安定成長により軟着陸への道が開けてきたという、従来に比べると明るめのトーンだ。

 世界経済の成長見通しは(表1)、22年+3.5%から23年+3.1%に鈍化したあと、24年+3.1%と減速した状態が続き、25年には+3.2%と若干改善。10月対比では24年が+0.2%と米国や中国中心に小幅上振れ。景気の下振れ傾向に歯止めが掛かってきたとの見方だ。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、22年+8.7%のあと、23年+6.8%、24年+5.8%、25年+4.4%と緩やかに鈍化。10月対比では24年不変、25年は-0.2%下振れで、先進国では両年とも下方修正。世界的インフレは上振れを続けてきたが、米欧利上げの影響などから鈍化がはっきりし始めたとの判断だ。だとすれば米欧がいずれ利下げに転換し、経済を下支えする。

 経済のリスクについては、従来は下振れリスクを強調してきたが、今回は上下双方向にバランスしているとの評価。中国の不動産不況の長期化やイスラエル情勢を含めた地政学リスクの高まりなど多くのbad newsにも拘わらず、世界経済が予想以上に頑健さを示してきたためだろう。

 最近の世界経済の動きをみると、デジタル関連の生産調整が終了しつつあるとの情報が聞かれるほか、月次景況感にも改善の動きが出始めるなど、明るめの材料が増えている感。ただIMFも指摘するとおり、なおユーロ経済は弱く中国経済の明確な回復もみられないほか、地政学リスクにも注意が必要だ。秋の米国大統領選挙の行方も気になる。

 日本経済は、経済活動の正常化が進むもとで前向きな企業行動も重なり、全体としては緩やかな回復傾向にある。先行き世界経済の底固さが増していけば日本経済の回復を後押しする。企業経営としては内外景気について、過度な楽観は禁物で下振れリスクへの目配りも必要だが、ベースラインとしては回復に向かうことを前提とした舵取りが大事だろう。

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