Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
24年度も値上げ継続─千葉県企業の価格設定
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年2月9日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
日本の物価の動きをみると(図表1)、川上に位置する円建ての輸入物価は、21年から国際商品市況高と円安が重なる形で大幅に上昇。その後23年には原油や小麦などの市況反落によって下落に転じたが、下落幅はその前の上昇幅に比べ小さく、水準としては概ね高止まりとなっている。
こうしたもとで川下の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、輸入物価から多少遅れる形で上昇し+4%程度まで達したあと、23年には鈍化しつつも+2%程度の緩やかな上昇基調を維持している。
川上の輸入コストの上昇が一服するなかで、今後の企業の価格設定はどのように展開するか。「千葉県企業経営動向調査」(ひまわりベンチャー育成基金<ちばぎん総研が受託>)の特別調査として、12~1月時点で千葉県企業にアンケートを実施したところ(図表2)、多くの企業が24年度も「値上げ」のスタンスにあることが判明。
やや詳しくみると、製造業・非製造業とも、現時点では未定との回答が5~6割と最も多いが、「値上げ」を実施・検討も4~5割とかなり多い一方、値下げを実施・検討はほぼゼロ。特に非製造業では、ほぼ5割が「値上げ」で「値下げ」はゼロ。
「値上げ」スタンスが継続する背景としては、①輸入コストの上昇が一服したとしても、多くの企業はこれまのでコスト高を価格転嫁し切れていないこと、②人手不足などに伴い労働コストの一層の増加が見込まれること、などが考えられる。非製造業の値上げスタンスが強いのは、製造業に比べ労働コストのウエイトが高いことが一因とみられる。
日本ではコロナ禍による供給制約、ウクライナ戦争、大幅円安などを契機に人手不足も重なって、企業の価格設定行動が明確に変化し、「日本では価格や賃金を上げられないという四半世紀続いた呪縛から解放」された感がある。ただ、価格が動き始めたことは、企業の「値上げ力」や「賃上げ力」が問われることも意味する。商品の多様化やそれぞれに適した価格の設定のほか、賃上げが可能となるような収益・生産性の向上、人材確保に繋がる働き方改革や人事・教育制度の充実など、企業経営における一層の工夫を重ねていきたいところだ。
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