Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

SAFによる地域経済の活性化─成田空港活用協議会セミナー

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年3月5日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 3月1日、成田空港活用協議会主催の「SAFの地産地消を通じた地域経済の活性化」をテーマとするセミナーが、千葉銀行本店で開催された。SAFとは「持続可能な航空燃料」(Sustainable Aviation Fuel)。廃棄された食用油などを再生利用した航空燃料のことで、航空各社や空港会社がCO₂削減のために導入を目指しているものだ。

 第1部は、SAFの最終需要者、製造者、原料調達者など多様な立場からの基調講演。第2部は、(1)サプライチェーン構築の課題、(2)千葉県におけるビジネスのポテンシャルをテーマとするパネルディスカッション。私は第2部でモデレーターを務めた。

 参加者の発言で印象に残った点は以下の通り。

 (1)サプライチェーンの主な課題は「コスト高」。SAFの価格は通常の航空燃料の数倍程度。原料となる廃食油についても供給が不十分で価格が高いため、家庭用を含め供給を増やしていくことが課題とされた。

 海外ではSAF製造を戦略的にサポートしている国もあるため、日本でも支援強化を期待する声があった。さもなければ、日本の航空会社の競争力低下に加え、航空会社が安価なSAFを求めることを通じた空港の競争力低下のリスクも指摘された。また、SAFのコスト高が環境保全の対価である点を含め、国民に幅広く理解してもらう必要があるとの指摘もあった。

 (2)千葉県でのビジネスは「地産地消のポテンシャルが大きい」という声で一致。背景として、成田空港という日本最大の需要地、京葉臨海地域という製造インフラ、原料供給元として食品製造拠点や飲食店・宿泊施設の多さ、さらにサプライチェーンを支える物流拠点の充実、などが挙げられた。

 米国では幾つかのスタートアップがSAF製造者となっており、千葉でもそのポテンシャルがあるとの指摘もあった。原料調達に関しては、大手飲食・宿泊業等だけでなく中小業者や家庭からの廃食油調達も進めていく必要があり、前者では食材供給と廃食油調達のセット、後者は自治体のリサイクルごみ収集とのコラボが考えられるとの声があった。

 私からは総括として2点指摘。第1に、SAFは千葉にとって重要な分野であり、オール千葉として理解を深め「SAF県」として国をリードするぐらいの意識が必要であること。第2に、SAFは原料供給元から最終需要家まで幅広い関係者を巻き込むことから、県や市町村を含め実効的な連携が大事であること。

 詳細についてご関心のある方は、協議会HPに後日掲載予定のYouTube、当社のマネジメントスクエア(5月号に掲載予定)をご覧いただきたい。

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