Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀は量でも正常化に着手

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年6月14日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は本日(6月14日)の金融政策決定会合で、長期国債について買入を減額していく方針を決定。3月のマイナス金利解除や長期金利操作撤廃といった金利面での正常化に続き、量の面でも金融政策の正常化に着手したことを意味。

 具体的な減額内容については、市場参加者の意見も確認した上で、次回7月の会合で今後1~2年の計画を決定するとした。

 日銀による国債買入額は現状6兆円程度。日銀が保有する長期国債の保有残高は、5月末時点で593兆円と政府発行額の半分を超える大規模。その償還額は月平均で6兆円程度にのぼるので、今後の減額により保有残高が減少に向かうこととなる。

 植田総裁は、3月の金利面での正常化の際に、短期金利操作を中心とした「普通の金融政策」に戻ると述べ、その後も繰り返し将来の国債買入減額に言及していた。5月13日には金融調節現場の裁量の範囲内で買入額がごく小幅(月額2千億円程度)減額されており、市場では早ければ6月の決定会合で正式な減額方針が決定されるとの見方が増えていた。

 2013年に開始した異次元緩和(量的質的金融緩和)は、大規模な国債買入による長期金利の押し下げを主に企図したものであった。このため、国債買入減少によりそうした異例の政策から普通の政策に戻っていくこととなる。

 今回は具体的な減額計画が示されなかったので、国債買入減額の金融経済に対する効果も判断できない。ただ、かねてから植田総裁が言っていたように、正常化が長期金利や経済に非連続な影響を及ぼさないような内容となる可能性が高い。

 日銀の試算によると、国債の大量保有による10年物国債金利の押し下げ効果(ストック効果)は現状1%程度。先行きこの効果が多少弱まるとは言え、当面は1%に近い効果を維持するような減額計画が示されるものと考えられる。

 本日の減額方針の決定を受けて、これまでのところ小幅ながら長期金利低下、円安、株高といった反応がみられている。6月にも具体的な減額計画を示すという事前の市場予想に比べると、今回の決定がハト派的な内容であったためである。

 とは言え、企業経営としては、先行き長短金利がジリジリ上昇していくことを意識したものとする必要があることに変わりはない。国債買入が減額されることに加え、短期金利についても秋ごろにかけて小幅利上げが予想されるためである。

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