Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

インバウンドは千葉を素通り傾向

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年6月26日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨年4月末に日本の水際規制が終了して1年強が経過。外国人入国者数をみると(表1)、全国では昨年秋にコロナ禍前19年の水準を取り戻し、円安の追い風もあって足もとは1割程度上回る。成田空港は、羽田には及ばないが19年を2割程度上回る。なお、日本人の出国者数はビジネス中心に回復しつつも、そのペースは円安の影響もあって鈍い。

 次に、本年1~3月の外国人の宿泊者数をみると(表2)、東京都での宿泊が19年比で約2倍にまで増加し、東京以外でも小幅増加に転じた。しかし、千葉県の宿泊者数は19年比で-16%と依然鈍く、成田空港の入国者数の増加とは対照的。

 都道府県47のうち19年を上回るのは24で、東京以外で大幅に増加している府県も増えてきている。関東地方では、千葉以外は全てプラスに転じ、宿泊者数の水準も箱根を有する神奈川の後塵を拝することとなった。

 最近では、地方を含めてオーバーツーリズムの課題が指摘される。私自身も最近、奈良(奈良公園)や広島(宮島)を訪れる機会があったが、インバウンド客の多さに圧倒された。それに比べると、千葉県の状況は残念だ。

 コロナ禍前から、成田空港に到着した外国人の約8割が東京に向かい、千葉にとどまるのは1割以下ということが国交省データで判明している。最近の回復局面においては、成田空港周辺への宿泊が期待できる中国人団体客の弱さもあって、千葉を素通りする傾向がより明確だ。

 千葉県では、国内客の回復もあって宿泊などサービス業での人手不足が深刻化しており、インバウンドの受入れ余地が小さいとの見方も可能だろう。しかし、インバウンド回復途上であった23年でも、消費額は円安の影響もあって日本全体で5.3兆円と19年を1割上回り、今年は7~8兆円程度、将来的には10兆円を超えてくる可能性が十分にある。

 世界ではアドベンチャー・ツーリズムやゴルフ・ツーリズムが盛んで、千葉にもポテンシャルがある。インバウンドの収益機会を見過ごすことがないよう、オール千葉で取組む必要がある。

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