Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

値上げ圧力が再び高まる──日銀6月短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年7月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(7/1日)、日銀短観6月調査が公表された。

 業況判断(表1)をみると、全規模・全産業では+12と前回から変わらず、良好な水準を維持。業種別には、製造業・非製造業とも概ね不変。

 製造業では、認証不正問題が拡がる自動車の鈍さが続く一方、幾つかの業種が海外需要持ち直しなどから改善。非製造業では、小売や飲食宿泊が消費者の節約志向などを反映し悪化する一方、物品賃貸や運輸が経済活動の持ち直しなどを反映し改善。

 24年度の事業計画は、設備投資が引き続き増加するなど、企業は積極的な姿勢を維持。

 全規模・全産業ベースでみると(表2)、売上・収益については、23年度が3年連続の増収・2桁増益で着地したあと、24年度は増収ながら小幅減益計画。自動車の不正問題が影響している面もあるが、基本的には企業の慎重な姿勢を反映したもので、昨年6月短観も小幅減益計画であったためさほど懸念する必要はない。ソフトウエア・研究開発を含む設備投資は、23年度に続き、24年度も1割程度の増加計画。

 今回の特徴の一つは、企業の値上げの動きが再び拡がる兆しがあること。販売価格判断(表3)をみると、「上昇超幅」は、製造業を中心に原油価格などの反落を反映し22年末から23年前半頃をピークに縮小に向かっていたが、このところ再び拡大の動き。一段の円安を反映して原材料コストが再び上昇に向かっていることと、人件費の上昇が明確になっていることが背景。

 今回の短観の結果は、日本全体としてみれば、景気はまずまずだが、円安等を反映して値上げ圧力が再び強まりつつあることを反映したものと考えられる。後者については、家計の節約志向を強めかねないこともあり、注意が必要だ。

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