Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

成田空港に近い「空と大地の歴史館」を訪問

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年8月23日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 成田空港は28年度に向けて機能強化が図られており、「第2の開港」ともされる。周辺のインフラ・施設整備やまちづくりが期待されるなど、千葉県の発展にとって重要な拠点の一つだ。

 昨日(8/22日)、成田空港に近い多古町と芝山町の町長を表敬訪問するとともに、空港周辺地域を視察。圏央道の工事現場、第3滑走路や大規模物流施設の予定地に加え、芝山町に位置する航空科学博物館、隣接する空と大地の歴史館も訪ねた。

 この訪問・視察は、できるだけ手触り感をもって現地の雰囲気を知ることが主な目的。同時に歴史館を訪問したのは、「第2の開港」に際し、先人が苦労された成田空港開港に向けた歴史も学べればと考えたためである。私も成田空港を巡る闘争を知ってはいたが、主に小中高時代の出来事で、千葉から遠く離れた関西に住んでいたこともあり、強い関心はなかった。

 今回は、歴史を熟知するスタッフの方による解説もお聞きし、理解を深めることができた。展示の内容は、①成田が新空港として選ばれた経緯、②当時の農業や戦後開拓の様子、③流血を伴う闘争の背景や歴史、④78年の開港直前の管制塔占拠事件、⑤開港後も続いた衝突、⑥90年代以降の和解に向けた話し合い、⑦空港と地域の共生意識の高まりなど。

 コンパクトな博物館ではあるが、「空港粉砕」と書かれたヘルメットや「不当弾圧抗議」と書かれた白い布、開港後に離陸を邪魔するために作られたバルーンなど、紛争の様子を生々しく語る展示品も豊富で、手触り感をもって歴史を知ることができる。

 現在も空港内に旧反対派の住居が存在していることには驚かされたが、同時に90年代以降、時間の経過や時代の変化とともに、空港と地域の「共生」さらには「共栄」を目指す動きが強まっていることは心強い。千葉県に長く住まれている方には常識かもしれないが、機会があれば訪れて欲しい。

 今回の機能強化も、地域住民に生活区域変更や騒音問題といった新たな負担を強いるものではあるが、目立った反対運動がないのは、空港とともに発展していきたいという意識が地域で強まっていることがあるためだろう。多古町や芝山町の町長のお話からも、空港の機能強化を地域発展に繋げるよう尽力されているご様子が見て取れた。

 成田空港の機能強化は、千葉県ひいては首都圏全体の経済発展につながるものだ。既に物流施設のプロジェクトが複数公表されているが、輸出を意識した新たな製造業や農園の可能性、さらには観光業の発展も期待される。同時に、こうした経済発展の裏側に負の影響を受ける方々が少なからず存在することも改めて念頭においておきたい。

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