Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
青森を観光で訪ねて─浅虫温泉地での連携
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年9月6日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
先週末、知人が住む青森を訪問。移動は東京駅から東北新幹線で3時間程度。温泉とゴルフを主目的とする2泊3日の観光だったが、幾つか感じたことをご紹介したい。
第1に首都圏に比べた涼しさ。今年は青森でも例年に比べ暑い夏のようだが、日陰や朝晩はかなり涼しく感じた。ゴルフで言えば首都圏のGWから6月前半のイメージで、年々暑さが増す日本において、「暑すぎないこと」が夏場の観光資源の一つになることを改めて実感。千葉県でも勝浦が過去35度を超えていないことが話題になっているが、もっとアピールしていいだろう。
第2に八甲田山からみる景色の雄大さ。1585ⅿの山頂までは登れなかったが、1300ⅿ程度のロープウエイ・山頂公園からでも絶景だ。緯度が高いことから、関東・甲信越で言えば2~3000ⅿ級の心地よい涼しさも感じた。最高地点が408ⅿの千葉県としては羨ましい限りだ。
第3に浅虫温泉の再生の取組み。浅虫温泉は、青森市北東部に位置し、新幹線新青森駅からも電車で20分と利便性が高い場所で、「東北の熱海」とも呼ばれる海に面した温泉街。ここ20年で宿泊者数6割減と苦境が続く中、23年3月に地域経済活性化支援機構(REVIC)の支援が入ることが決定し、地元の金融機関なども出資する形で観光地域づくり法人(DMC)を設立。現在、全国で培ったREVICの豊富なノウハウを活かしながら再生を図っているところだ。
老舗3旅館の同時改装が行われ、各旅館のコンセプト明確化、共同の予約センターや食材調達、業務管理といった効率化に向けた取組みなど、旅館間の連携が進められている。インバウンドを意識した人材も配置しているようだ。
私が泊まった海扇閣は、津軽文化の発信拠点と位置付けられ、ねぶたや津軽三味線などを披露するショーが行われる。綺麗に改装された館内・客室、海を展望する温泉、地元の食材を使った美味しい料理と併せ、改装後に引き上げられた値段に十分見合ったサービスと感じた。
このように温泉地としての連携が進む一方、他の観光資源(八甲田山など)や近隣の有名ゴルフ場(夏泊ゴルフリンクスなど)との連携の余地は小さくないと感じた。例えば、私を含め東京圏からの観光客には、温泉とともに避暑地感覚でのゴルフを楽しみたいとする人も少なくないだろう。交通手段の提供を含め、温泉地とそれらをセットでアピールする余地は大きそうだ。
千葉県は東京圏に位置し、観光業は相対的に恵まれている。ただ、長い目でみれば、東京圏でも人口が減少に転じ需要が細っていく可能性があるほか、県南部や東部では働き手も減少していく。成田空港からの外国人客誘導をはじめとした需要の取り込みと業務効率化の両面において、将来を見据え、地域を超えた取組みを含め様々な形での連携を強めていく必要がありそうだ。
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