Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

石破総理の所信表明演説

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年10月8日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週金曜日(10月4日)午後、石破総理の所信表明演説が行われた。内容は「5つの守る」を中心としたもの。すなわち、①ルールを守る、②日本を守る、③国民を守る、④地方を守る、⑤若者・女性の機会を守る。それら5本の柱で、日本の未来を創り、未来を守るとしている。

 経済政策は②~⑤に散りばめられているが、所信表明前から岸田政権の継承方針を示しており、その線に沿った内容。総裁選までは金融正常化や財政再建の意欲が強いとされていたが、現実的対応に軸足を置いているようだ。日銀総裁との対談後に金融緩和の継続が必要と発言していたが、所信表明では「デフレ脱却」を最優先とした。財政については、危機に強い経済・財政を作るために財政状況の改善は必要としつつも、「経済あっての財政」と経済を優先する姿勢を示した。

 イノベーション、スタートアップやリスキリングの支援なども継承。懸念されていた金融課税は打ち出されず、「投資大国」を表明。岸田政権の「資産運用立国」を引き継ぐとともに、産業への思い切った投資が行われる施策を講じるとしている。

 経済関連での独自性の一つは地方創生。「地方こそ成長の主役」とし、地方創生の交付金を倍増させる方針。また、デジタル田園都市国家構想を発展させる形で、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、今後10年間集中的に取組む基本構想を策定する考えを示した。もう一つの独自性は、総合的な「幸福度・満足度」の指標を策定するとの方針。国全体の経済成長のみならず、一人当たりGDPの増加と満足度・幸福度の向上を優先する経済の実現を目指すとした。また、最低賃金について20年代に1500円を目指すとの目標も思い切った方針だ。

 経済以外の独自性としては、防災庁の設置や皇位継続などに関する憲法改正といったところか。

 これらはいずれも所信表明の段階。総選挙を経て自公政権の継続が決まれば、新たな経済対策や予算編成などを通じて、具体的内容が次第に明らかになっていく。地方創生関連や最低賃金目標をはじめ千葉県経済にも一定の影響を及ぼすため、注意してみていきたい。

 問題はその総選挙の行方が不透明なことだ。石破総理は解散・総選挙について、最も早い日程で実施する方針に転換した。選挙前にいわゆる「裏金問題」を含め野党としっかり議論するとしていた前言が撤回された形だ。一方、パーティー券の不記載議員に対し、公認のハードルを上げるとともに、公認議員についても比例代表への重複立候補を不可とする方針を急遽発表。

 以上のような所信表明の内容や選挙公認に関する方針等が、「裏金問題」などに厳しい目を向ける国民からの評価や、結束が弱まりつつある自民党の党運営などにどう影響し、総選挙にどう波及していくか注目されるところだ。

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