Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀:今回は金利据え置きながら、先行きの利上げスタンスは維持

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年11月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は昨日(10/31日)、金融政策決定会合を開催し、四半期毎に経済・物価見通しを示す展望レポートを公表。経済物価の見通しは7月会合から概ね不変で、金融政策も現状維持(政策金利0.25%)を決定。

 経済物価見通しの概要は以下のとおり(下表)。

 ①GDP成長率は26年度にかけて1%前後と、日本経済の実力である潜在成長率(0%台後半)を幾分上回る成長を続け、経済の体温がジワジワ上昇していく姿を想定。

 ②消費者物価上昇率は、25年度が原油価格下落等の影響から前回対比で幾分下振れるものの、26年度にかけて2%程度の上昇率が続くとの見通し。

 金融政策については、7月の利上げ(0.25%)から3か月しか経過しておらず、事前に10月利上げを予想する声は聞かれなかった。経済物価見通しとあわせ市場予想通りであり、植田総裁の記者会見の内容を含め、為替・株価への影響もさほど大きなものではなかった。

 先行きの政策については、「現在の実質金利(名目金利からインフレ率を除いたもの)が極めて低い水準にあることを踏まえると、経済物価見通しが実現すれば政策金利を引き上げていく」との考えを維持。同時に、「米国をはじめとする海外経済や金融資本市場の展開を十分注視していく必要がある」との考えも表明し、大統領選挙の結果などを見極めていく姿勢を示した。

 米国の大統領選挙結果や日本の政権運営の経済物価に対する負の影響が限定的であることや、来春闘の賃上げが堅調であることなどが見通せるようになり、2%物価上昇への道筋がさらに確かなものになったと判断すれば、追加利上げ(0.25→0.50%)を実施するものと考えられる。

 植田総裁は、米経済や市場動向に関し「リスクの度合いは少しずつ下がってきている」とし、8月の市場混乱から使っていた「利上げまでの時間的余裕」との表現は使わないことも明言。次回利上げについて、特定の時期を示唆してはいないが、少しずつ近づいているとの感触だろう。

 現時点では、「来年1月利上げが中心シナリオ、円安進行といった場合には12月に早まる可能性がある一方、春闘の見極めなどに時間を要するようであれば3~4月にずれ込む可能性もゼロではない」程度のイメージを持っておけば良いと思われる。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。